CiRAニュースレターvol.42
2020年7月17日発行
藤田 みさお 教授

新型コロナウイルスと再生医療

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新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちの日常は一変しました。安心して生活が送れるよう、一刻も早い治療薬とワクチンの開発が望まれます。新しい薬が「治療」として普及するには、まず「臨床試験」で安全性と有効性を確認し、国の承認を得る必要があります。

現在、世界中で新型コロナウイルスの臨床試験が行われていますが、いずれも開発初期の段階にあり、科学的な検証を経て国の承認を得るまでには、しばらく時間がかかると言われています。

そこで期待されているのが、別の疾患の治療薬を適応外使用することです。抗インフルエンザ薬のアビガンはその一例です。ただし、インフルエンザに効いて安全な薬が、新型コロナウイルスに効いて安全かは分かりません。そこで、アビガンは臨床試験として患者さんに投与されています(2020年5月11日現在)。治療として先に承認されたレムデシビルは、臨床試験を経たとは言え、元のエボラ出血熱の治療薬としてまだ承認されたものではありません。特効薬がない状況での特例中の特例であり、提供も無償で行われています。

海外では今、新型コロナウイルスの治療や予防と称し、臨床試験を経ていない未承認の再生医療を喧伝する医療機関が問題になっています。国際幹細胞学会は、臨床試験で検証されていない再生医療を受ける前に、患者さんが知るべき内容をまとめており、私たちの研究チームはこれを翻訳して公開しました*。国内には新型コロナウイルスの治療で問題となる医療機関はほとんどありませんが、あったとしてもこうした再生医療を安易に受けることがないよう、私たちの翻訳を参考にしていただければ幸いです。

(文・上廣倫理研究部門 藤田みさお)

 

国際幹細胞学会による再生医療に関する患者さん向け情報をまとめた文書
(Image used with permission from the ISSCR.)

https://www.isscr.org/scientific-clinical-resources/informed-consent-standard-for-stem-cell-based-interventions