科学的根拠が十分でない幹細胞治療のインフォームド・コンセントに関する論文が日本医事新報に掲載されました

藤田みさお教授(CiRA上廣倫理研究部門、京都大学高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点)、一家綱邦室長(国立がん研究センター 医事法研究室)、八田太一助教(2021年3月31日まで同部門、4月1日より静岡社会健康医学大学院大学 講師)による論文が2021年3月27日、日本医事新報に掲載されました。

2019年に国際幹細胞学会は、科学的根拠が十分とはいえない幹細胞治療を行う際に、患者に説明すべき内容を基準としてまとめました。その第一の目的は、患者が必要な情報を適切に得た上で意思決定することを助けるためでした。第二の目的は、患者と医師・医療機関との間に起きる紛争解決を見据え、医師・医療機関が説明義務を果たしていたかを判断する明確な基準を示すためでした。幹細胞治療クリニックの説明義務違反をめぐる裁判例は、日本でも報告されています

今回の論文では、国際幹細胞学会によるこのインフォームド・コンセント基準を紹介し、日本の再生医療法施行規則が定める説明文書に書くべき内容と比較しました。その上で、患者が治療として提供される再生医療の利益やリスクを正しく評価し、適正なインフォームド・コンセントを行うためには、治療に関する説明事項を今より具体的、かつ明確に求めることが、再生医療法改正に向けた議論における課題であると指摘しました。

 

<原論文情報>
論文名:国際幹細胞学会による未検証の幹細胞治療を行う際のインフォームド・コンセント基準-再生医療法下で提供される治療に関する説明事項への示唆[提言]
掲載誌:日本医事新報
著 者:藤田みさお,一家綱邦,八田太一

URL:https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=16822 

 
用語説明
注) 再生医療等の安全性の確保に関する法律(再生医療法)

細胞を用いた医療技術の安全性を確保するために制定された法律であり、2014年に施行されました。再生医療を提供する医師や歯科医師は、国が認めた認定再生医療等委員会による審査を事前に経た上で、その提供計画を国に提出すること、及びその実施状況について定期的に報告すること等が義務付けられています。審査、届出、報告を通じて、国は細胞を用いた医療技術の実態を把握できるようになりました。