科学的根拠が十分でない幹細胞治療の評価に関する論文が日本医事新報に掲載されました

藤田みさお教授(CiRA上廣倫理研究部門、京都大学高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点)、八田太一助教(2021年3月31日まで同部門、4月1日より静岡社会健康医学大学院大学 講師)による論文が2021年3月13日、日本医事新報に掲載されました。

幹細胞研究の進展は著しく、これまで治癒が望めなかった疾患に対する新しい治療法や薬の開発が期待されています。一方で、研究を経ておらず、科学的根拠が十分でない幹細胞治療が商業的に提供されていることが、国際的にも問題視されています。

今回の論文では、安全性や有効性が十分に証明されていない「未検証の幹細胞治療」は倫理的に許容されるのかという問いを立て、治療の現状と海外の医学系学会による評価を概観しました。その上で、わずかな例外を除き、こうした治療を倫理的に正当化することは難しいと結論し、日本の再生医療法改正に先立ち、再生医療「治療」の安全性や有効性について、日本医学会等に照会することを提言しました。

 

<原論文情報>
論文名:「未検証の幹細胞治療」を提供することは倫理的に許容されるのか─海外の医学系学会による評価と日本への示唆[提言]
掲載誌:日本医事新報
著 者:藤田みさお八田太一
URL:https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=16736  
 
 
用語説明
注) 再生医療等の安全性の確保に関する法律(再生医療法)

細胞を用いた医療技術の安全性を確保するために制定された法律であり、2014年に施行されました。再生医療を提供する医師や歯科医師は、国が認めた認定再生医療等委員会による審査を事前に経た上で、その提供計画を国に提出すること、及びその実施状況について定期的に報告すること等が義務付けられています。審査、届出、報告を通じて、国は細胞を用いた医療技術の実態を把握できるようになりました。