CiRAニュースレターvol.41
2020年4月14日発行
高嶋 佳代 研究員

臨床研究と患者・市民参画(Patient and Public Involvement, PPI)

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最近、将来の治療に向けて患者さんたちの想いや経験を役立てる新たな取り組みに注目が集まっています。これは患者・市民参画(PPI)と呼ばれるもので、研究の計画立案からその結果を社会に届ける一連の流れにおいて、患者や市民の経験値を反映していく活動を意味します。日本では、日本医療研究開発機構(AMED)という公的機関がPPIを説明するためのガイドブック※を公開しています。

なぜPPIが求められているのでしょうか。その大きなメリットの一つは、研究者だけでは気づきにくい課題に、患者や市民の視点から新たな気づきをもたらすことにあります。現に筆者も、視覚障害を持つ方による「見えなくても、言葉だけですーっと頭に入る説明をする先生がいる」という言葉をきっかけに、患者・市民による経験知を臨床研究の場に生かす貴重な機会を持ちました。臨床研究の説明は、ともすると専門用語が多くなるなど難しさを伴うため、この「言葉(音声)だけですーっと頭に入る説明」の具体化に向けて、視覚障害者支援や音声ガイド作成の専門家、眼科医、そして当事者の方々との意見交換を重ねました。その結果として、同音異義語や専門用語への説明の配慮、説明の順番や効果音の工夫など様々な知識や気づきに支えられた、「音声による説明補助資料」を作り上げることが出来ました。

このような経験から、研究者と患者や市民が協働する事の重要性を実感するに至り、PPIのさらなる発展をささやかながら応援していければと考えています。

 

PPIガイドブックの表紙

https://www.amed.go.jp/ppi/guidebook.html